私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

2015-01-01から1年間の記事一覧

柿の実とともに 2014年 ついに魔女の一打に襲われるまで

私が動けなくなったと聞いて、母の気力も弱ったのか 柿の実の巻 「暗い歌」カーテンの向かうは雲の世界にて時流れつつ深閑とせりどうしやう君との関係この先の難聴の日々生きむと母は死ぬ前の最後の旅と名づけたき明日よりの刻道しるべ無し贖罪も悔ひも涙も…

鬼灯とともに 2014年 迷い道坂道

皺だらけの顔に、突然瞳が光るときある ほおずきの巻 「今年のTokyo」どこへ行く地震ある島逃れむにテロや疫病難民溢る「終活」の一なる遺言固まれるいつでも来いと旅のプランをタワーのみ都会の墨絵に紅を差すお台場まわる秋雨一日金あれば増やさむとてかビ…

牡丹とともに 2014年行ったり来たり

すぐに忘れる母は、わたしを待っているだろうか 牡丹の巻 「初ビートルズ1」吾を駆るリズムとサウンドしたたれる緑の道なりファウストもどき眼に緑初ビートルズつむじ風倦みし心もこの世を愛すビル群の並ぶ空の端CDにポールかレノンか浴びて運ばる笛吹市の…

風船葛とともに 2014年秋めくまで

南風激しい、心臓には悪いらしい、ペースメーカーある母 フウセンカズラの巻 「皐月の思惟」回りゆく地球の仕組み止むなくてたちまち暗し緑と茅花と老い人の植ゑゐる何かたちまちに人参なすびモロコシも出づ吾といふ竜巻襲来ダンゴムシの団居(まどゐ)の夢…

アイリスとともに 2014年 房総の4年目後半

2014年 見ないまま今日の嵐に散る桜、母は知るや アイリスの巻 「いつもの月命日」早生の子の黒厨子をしづじづと蓮の始めて開く七月油断して触れてしまひし罪科の輪 修正きかぬ変わらず痛む父の死の十一日と息の生日 文月十四日無駄に拘る意味不明の亡き…

鈴蘭とともに 2014年 たくさん詠った、のは確か

習字や絵をかきたいのに出来ないと母は嘆く 鈴蘭の巻 「都会から鄙への帰路 ーー 首都高い往く」東京の地下の深きにインフラの秘密の迷路作られてをりガックリと長い黒髪垂らしたる顔なきものの座しゐる車内都へと集まる栄華 揺れながら名も無きものら希望に…

桜とともに 2014年終活が心を占める

運の良い母だと思ったり可哀想だったり 桜の巻 「依然として破れ鍋に綴じ蓋」朝夕の不満だらけが不満にて自省すれどもぬるりとどぜうかく妻に疎まるるわけ何故作る吾を頼る夫天涯孤独なり吾が不満と隷属のわけ分析す地霊のごときマグマ危ふし夫の弱みついに…

菜の花とともに 2014年 チャレンジばかりはする

春の野の花を摘む、すぐにしおれる 菜の花の巻 「文句の多し」この不快胃酸逆流ならむとて半身起こしてい寝ればどつぼ斜めより世を眺めては歌でなしと失笑さるる変人にてそろすり減りし三年来のスニーカーまだ履けるかもと思ひてみつき祖母譲り外反母趾の遺…

侘助とともに 2014年残骸の山築き続ける

半刻の散歩、ひさしぶりの天然 侘助の巻 「春への愁い ーー 赤の波長」仕方なしかく夕暮れて雪原に赤の波長を受けて立つ春雨の庭の千草をあすは摘むセシウム少々含まむとても入選の歌を読み終ふきざはしを鬱二日分転がり落ち来共感とふ思考のパターンのレー…

冬の実とともに 2014年立春と大雪

体も脳も衰えるものだ 老いの道 冬の実の巻 「立春」春立つや寒波傾(なだ)るる西空のもやの帳(とばり)の月とふ裂き傷隣屋に実る黄のもの 冬鳥の活計(たつき)支ふる意図かは知らずまばらなる箏曲の会 究めたる人の爪音耳に飛びこむ何思ふ猫族なるや一日…

柚子とともに 2014年房総に3年過ぎて

2014年 92歳の母 回復して普通食 柚子の巻 「振り返る」母と居る正月吾に娘あり 銀髪整へ美しくする 吾が想ひなにかが世とはズレがちを「おっちょこちょい」と父の呼びたる年新た父娘(おやこ)並びて「春の海」奏せし図あり 振り袖延べて野の花の絵の…

菊紅葉とともに 2013年 結局空振り

会えば繰り返される昔の話を聞く 菊紅葉の巻 「霜月の庭」側溝の沃土にずらり朝顔のこぼれ種の芽 カイワレもどき紫蘇の香(か)を抱き 引き抜く重たさの 無数の根の張り土を抱きて ==茂った紫蘇を引き抜く霜月の草引きをれば日々草 改良されて希望の新芽 …

3本の菊とともに 2013年 酷暑の夏

常温の施設にて天然と切り離されて母は 3本の菊の巻 「人体発火」戦(いくさ)とふ抗(あらが)へざりしシステムに命断たれてひとりひとりは茹(う)だる日も朝に露草夕べには白粉花のありて半月覚悟して玄関開く 温気(うんき)むつと南国の葉も茹だりしな…

無名の菊とともに 2013年 努力する

一月一度の訪問と母の笑顔 無名の菊の巻 「父の命日 夏盛り」思ひ出しくるる人なき命日を父は白百合のごとく笑へる無念なる娘なりしと嘆かひて父は逝きしか思ひてへこむシベリアゆ運良く帰国したる父の手帳に残る椰子の実の歌内側に金魚や花火描かるる硝子の…

よめなとともに 2013年元気だったかも

嬰児と引き上げてきた若き母 よめなの巻 「家族の像」山羊さんの届くこと無きお手紙を唄ふ子の瞳はいつも濡れにき ==白ヤギさん黒ヤギさん子の妻を娘と思ふ吾が心 それも疎まれひとり死ぬらむ紫陽花のピンクとりどり呉れし嫁 緑の葉陰のその手美し ==母…

柿変化とともに 2013年 大胆な試みもあり

生の手触りまざまざと母は生きえて 柿変化の巻 「机に拠る」鈍色の空はさながら冬の底望む気持も失せて日の過ぐ絵描きらの腕も及ばじ色の海デジタル画面に溢るる具象パソコンの画面に虹を捉ふるは視覚細胞数字を見るのかわが歌に習ひも性も現るる不注意にし…

お茶の花とともに 2013年房総に2年ののち

2013年 母の手作りのものいくつも お茶の花の巻 「失望の年?」年末に初夢宝くじ少し買ひしばかりに失望の年ただ白き紙美しく括られて今年も荒野広がるペイジふたつほどがつがり抱きローソンへ晴れ着のはたち敏捷のさまオリオンをキリリと飾る冬空を覗け…

ヒヨドリジョウゴとともに 2012年 歌の旅だった

母は施設でも描く、わずかの天然を ヒヨドリジョウゴの巻 「日本」白き薄き花弁に紅さす山茶花を口ずさみつつ垣根を曲がる書に倦めば夏は畳にどつたりと冬は炬燵にもぐる日本女学生弓引く日々の黒袴ぴたり畳みて寝圧しの準備ふるさとと言ふには淡き七輪の炭…

烏瓜とともに 2012年首都をい往く

改めて母がその生を愛おしんで生きたこと カラスウリの巻 「東京湾アクアライン」国道をバスは飛ぶがに白富士の右に左に遠く佇ちつつ無謀にも東京湾を跨ぐ橋 風に煽られバスの耐へゆく海をみて可愛い青い色なりと呟く己が心いぶかし南風(はえ)にあれど未だ…

金木犀とともに 2012年秋をゆく

母娘というより戦友のように 金木犀の巻 「不祥事」海底のトンネルなれば仰ぎみる ありうるなれどまさかと打ち消す沖縄に後生の花と名付けられ現世の庭に血の色の美し ==ハイビスカスの異称負の遺産そのままにして政争の泥沼どしゃ降り猫バスも来ず 知らぬ…

栗の毬とともに 2012年夏過ぎる

哀れ 母の老いたること 栗のイガの巻 「夕涼」夕まぐれ畳に伏して灯も点けぬ孤独も良きか月と虫の音涼風にブラインド揺れ白々と透ける月影 こはどこの国 どの部屋に行きても窓にこおろぎの囁く夜となる宇宙ノイズと満月を見上げその位置描きみるけふ球面に溢…

ざくろの花とともに 2012年しだいに慣れる

しだいに施設に慣れた老母 ざくろの花の巻 「ひまわり1」よき夢を 土のお布団そつと押し松葉牡丹のひげ根を寝かす卯月より卯の花咲くまで抜かず置くキラン草似のほたるなんとやら ==トキワハゼとのちにわかるかたばみと謎の藤色雑草に盾となるべしひまは…

花柘榴とともに 2012年 暑き日々なり

14年間そばに暮らし、もう4年間離れている 母の花柘榴の巻 「モンステラの意気」モンステラ出たとこ勝負の葉の形やぶれかぶれの自由の夢か文才も美貌もなくば何をして三十年をわが満たさむや我が歌はよほど地味らし共感を呼ぶさえなくて振り捨てらるると…

山ぶどうとともに 2012年喜びもあり

母の姿は末路の我なり 山葡萄の巻 「閑暇」ひとつずつ夏の花種思案中今年どうやらひまわり蒔けるクローバーのふと匂ひきて遥けくもタイムスリップ野遊びひと日山陰の汽車の旅こそ眠られぬ窓に果てなく荒波歌ふかけ声と出車(だし)の眦(まなじり)忘れ得ぬ…

庭梅の実とともに 2012年春から夏へ

少女のような老母に会いたい 庭梅の実の巻 「過敏」黒き眼に口笛軽く吹きやるに淋しきひとを犬も無視する白足袋の揃ひて待てり琴爪の幽かに立つる春の波音 ==箏曲「春の海」まだみつきしか経たぬのにはや倦みて暦破るも物憂き鼓動弥生尽 風に抗して樹も我…

山茶花姉妹とともに 2012年生き延びている

我より23年いつも年上 おしゃべり山茶花の巻 「悪妻」苦虫のやうなる夫の背を掻けばわれの手求め熊と蠢く夫とわれ占星術の獅子と獅子譲るができぬ三十年戦争真似事に手相占ふ もし夫に先立つとせば憤死なるべし二十年死を傍らに生くる夫脅し文句の「明日や…

赤いさざんかとともに 2012年となる

2012年 三月より持ち直した母なり 山茶花の巻 「あらたまの力」あらたまの空に光はみちみちて溶け入るごとく重心揺らす ==太極拳冷気すら快きまで息熱く太極拳に自他を去りゆく烏らが車道を低く飛ぶ背なの漲るパワー翼龍として落日の富士の稜線オレン…

柿もみじとともに 2011年やっと終る

白髪の母は運のよい人である 柿もみじの巻 「近き思い出」けふの幸こそ忘れまじ満月を見て交はしたる親子の眸仏桑華(ぶっそうげ)と呼ぶはなにゆへ緋の色の最後の心ふたつ開きぬ藍色の冬至前後の沈みたる空の夕星頼りの光 大洗海岸の波営々と寄するを人とも…

黄菊とともに 2011年歌と生きる

母の細胞は縮んでいく 黄菊の巻 「対話」珍しく音聞かせたる風鈴は北国生まれ冬めく風に軒端からそろそろ風鈴ドアノブに吊るせばコンとノックしてくるポーチュラカ霊気を浴びて甦る どうするつもり根は切ったのにおじさんが「気持悪いよ暑すぎて」トンカチし…

小菊とともに 2011年に別れて

この母といつ永遠に別れるか 小菊の巻 「弟逝く」夏来れば誕生日あり死ぬもあり弟死にたり今年の盆に白百合と笑顔の父と一枚の写真に浮かぶ互ひの祈り晴れし日の夕空星の光り初む群青色を好みたる人その淡きあまりに淡き花色のホテイアオイの薄紫の思ひ出は…