私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

花柘榴とともに 2012年 暑き日々なり

14年間そばに暮らし、もう4年間離れている
母の花柘榴の巻

         

モンステラの意気」

モンステラ出たとこ勝負の葉の形やぶれかぶれの自由の夢か

文才も美貌もなくば何をして三十年をわが満たさむや

我が歌はよほど地味らし共感を呼ぶさえなくて振り捨てらるる

ともかくも日々懸命に自を責めて限界までをねじれ咲くまで

もぢずりのきつと小庭に生えくるをねじねじと待つ忍ぶ心に



「人付き合い」

流産せし友黙々と腕回しプールについに遠泳二キロ

有明の月なほ高く南西のドイツの空に八時間の差

旅不安 二度と会ひたくない人とニアミスとなる一度ならずに

日曜日隣りに笑う声あればお節介にてわがほつと笑む

電話口めんだう気なる息の後ろ さへづり止まぬ孫とふ雲雀



「野のもの」

潔(いさぎよ)き赤の花もて道野辺に見回すごとくふいに立葵

露草の花びらほどの翅をして青蜆蝶ひとり去りゆく

死の顔は雀も人も遠きこともどれぬ道をまぶた落として

砂浴びの雀らのうち一羽のみいびりだされて野垂死にまで

なべて葉は斑入りや良しと会ひたきは半夏生かな野道のいづこ

野良猫の一生(ひとよ)も登り下りあり「猫坂」とふを書き残しやる



「どんな人」

うちのボスこまつたなあが口癖で部下がそのうち原因排除

出しやばらずお喋りをせず性(せい)なるか母の教えかなほ縛らるる

月も見ず五感使はずパソコンに憑かれし女こそこそ生きる

花束と呼ばんか鉢に大輪の後生の花の七つの歓喜

仏桑華(ぶっそうげ)風が落とせる一花の初々しきを髪に挿すべし

サイエンスへ文学少女目覚ませし不思議粘菌南方熊楠(みなかたくまぐす)



大暑を待つ」

何の木か諸説ある棘 梅雨さなか白き花もつ柚子か金柑

墓掃除しつつ謝る優しかりし父の怒れる最期の眼差し

お互ひに罠にかかりしなにの罠 夢見し心地のはるけき昏(くら)さ

大暑まえめうに涼しく小雨のみ無くした帽子いくつか浮かぶ
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