私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

山ぶどうとともに 2012年喜びもあり

母の姿は末路の我なり
山葡萄の巻

           

「閑暇」

ひとつずつ夏の花種思案中今年どうやらひまわり蒔ける

クローバーのふと匂ひきて遥けくもタイムスリップ野遊びひと日

山陰の汽車の旅こそ眠られぬ窓に果てなく荒波歌ふ

かけ声と出車(だし)の眦(まなじり)忘れ得ぬ昭和三十年のねぷた祭りに

海上を蒼風(あおかぜ)わたる 充ち満ちて無窮の声のあるかのごとし

人の輪を君も求めし ドラマにも親しき仲間共に働く



「老婆心」

初老われミスドのコーヒー飲みをればおかはり黙ってもってきてくれる ==ミスタードーナッツ

華麗にも若き歌人の詠む痛みわれらは過去にとうに慣れたる

老ひ人はいささか痛み知るなれど明日はまた未知をののき歌ふ

散乱の夢とむくろを踏みしだき軌道はずれず行くやら日本




「金色の大満月

日は陰り南の庭にすず風の流るる頃合ひ西日は黄金

夕七時高く孤独に満月の星を隠してただ澄みし空

斜めなる月の軌道がかろうじて満月見する絶妙楕円

ETの大満月に向かふ影 最終便の光点滅 ==映画「ET」の名場面



「新樹」

さらさらと傘に音する小糠雨 薄き白布を新樹にかけて

紫と赤の花よりもたらされ薄みどりなるこのさや豌豆

万緑と言ふべき柿の若葉陰きらり幼きかなへび動く

早緑(さみどり)に洗い立てなる草も木も凄まじきまで大地の化学

きらきらとヘデラの繁みに花咲くは新樹のしたのこもれびなりし

母の日のブラウス持ちて青葉道 曲がりし背なの隠るるやうに

鉄塔はいづこのものぞ新緑の波わたりいく高電圧線

豊かなる川面に新樹の映ゆるさま早苗もそろひ輝き渡る




「孫歌」

婆ちゃんの長寿と愛に意味ありと学者の説けば孫歌詠まむ

「オバアタン」出会ひて笑ふ二歳児の別れのときは眼呆然と

孫歌に障りはあらめさはあれど愛の歌には変わりはあらじ

この赤き髪はたれ似と問はるるに心秘かに吾なりと思ふ




「月と日」

まどろめる伏月仰ぐ早出にて卯の花零しに追ひかけらるる

二十四年水無月とおか朝八時下弦の半月ひとりし仰ぐ

雨の夜を豊かに濡れし庭のもの朝日子ありてすべて為されし

陽のリングあの新月も嘘のごと望月白く空木に照れり ==世紀の金環食

台風の靡かす雲のなお残る青と新緑強く塗りたし ==早くも台風




「世を眺めて」

犯罪は社会の罪と思ふわれ困惑しいる言ひ募る人に

技術はや日進月歩といふなれど必然のごと失業増やす

白骨のひとつだに無し黒髪の一束恋ふる声三陸

足元の砂崩れゆくもがくほど支へ失ふ間一髪の浜 ==溺れた記憶

満州を逃るる崖を落ちて往く愛馬の声を父は忘れず



「親と子」

親よ 子としばしの遊び童心にもどり楽しみ分かち合ふべし

携帯を手放さぬ親 ゲームとふ気晴らし得るまで子とは淋しき

忙しさに父母邪険なるときあらめバアバはキミの遊び友達

暖かき二歳のからだわが胸と膝にぴつたり収まるを抱く
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