私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

金木犀とともに 2012年秋をゆく

母娘というより戦友のように
金木犀の巻

         

「不祥事」

海底のトンネルなれば仰ぎみる ありうるなれどまさかと打ち消す

沖縄に後生の花と名付けられ現世の庭に血の色の美し ==ハイビスカスの異称

負の遺産そのままにして政争の泥沼どしゃ降り猫バスも来ず
 
知らぬ犬よ叫び絶え果て爪痕はドアの表に抉られ残る

哀れ友よ女ひとりに与へらるる宿世の行方受け止めかねつ 



「追憶サイト」

限りなく思へしメモリわづかなり追憶サイトの写真取りやむ

秋の夕 薄雲に紅刷かれいて優しき指の存在(ひと)ぞあるべし

函館のまちの輝き独り観てかへりし青年十三年前

二千八年挽歌以外をおろおろと歌ひ始めぬわが老ひづきて




「青き朝顔

珍しくなにか嬉しきことのあるそれが嬉しき秋の朝顔

五つ目の「大洋の青」小さく咲く 冬中育ち生垣となれ ==oceanblue

天の青ただ爽やかと思ふうち悲しうなりぬ秋風の中 ==heavenlyblue

名にし負ふ天上の青 霜月の寂しき色と横より眺む

冬立つも窓の向こふに淡青のヘヴンリィブルー咲けばたのもし ==立冬

百舌の声降る庭のすみ点々とスノーポールの芽立ちさみどり

夏蒔きし何かの花の細き葉がひそかに並ぶ立冬の庭




「晩秋の樹々」

混植の生垣に春香りたる卯の花の実はこの赤か黒か

ほの黒きネズミモチの実花札に見たる時より風情好まし ==花札にあるか?

槙の葉に丸き深紅のふと見えて番のごとき緑の玉つく

腕太きさくらもみぢの一本が道に火灯すやるき無さげに

駅前のさらしな通り閑散といちやうの黄にもなほ緑あり

時雨きて光る車道にカラカラと桜紅葉の落ちて色冴ゆ




「喪ったもの」

失ひし二千四年の歌を探す電子の海に浮きつ沈みつ

悲哀より零(こぼ)れたる歌また掬(すく)ひ紐に結わえて指の冷たし

いかばかり砕けたるかと旧友のことばますぐに津波のごとし ==長男を知る旧友

玄関に毛玉のやうなる仔猫いてその日の嫌悪すべて許しつ ==次男のツィート

ヤブ医者に中耳炎の子を強ひし我 愚かなりしを遠く謝る ==次男のこと




「落としもの」

潮流のまなかの島よ災ひのひとつひとつに路の尽きゆく

遠流にて果てたる高貴の才覚の遺せし野望定家へつなぐ

平安の絹の衣をかづきつつ望月ひとり忍びて雲間

「雨は雪に変わる」切なきメロディの呼び覚ますわがイヴのお話





「拾いもの」

老年の夢みる未来まづ古家買ひて友垣媼ら棲まむ

新宿の母とふ人か吾(あ)を見付け良き気あるとて嘘とも思へず

何を待ち時の流れをわが生きる本もニュースも過ぎ去る翌日

不可解のこの世のさまざま耐えきしは今ぞ涅槃に安らはむがため

重き鉄は地球の芯にて磁場の元 なれど呼吸は錆をもたらす

白々と砂粒に似る星たちとクオークとの差異ゼロいくつつく
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