私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

烏瓜とともに 2012年首都をい往く

改めて母がその生を愛おしんで生きたこと
カラスウリの巻

        

東京湾アクアライン

国道をバスは飛ぶがに白富士の右に左に遠く佇ちつつ

無謀にも東京湾を跨ぐ橋 風に煽られバスの耐へゆく

海をみて可愛い青い色なりと呟く己が心いぶかし

南風(はえ)にあれど未だ冷たし窓外に鴎の一羽飛びて進まず

底浅き東京湾に小舟止め潮の引く間を人ら働く

事故の報ヘリコプターは蚊のごとく淡く紅さす富士を横切る

幾たびも通ひたりしに思はざる富士は常にぞ我に添ひたる

樹海越え懐深く倭の国を見渡しやまぬ峰と思ひぬ




アクアライン海底トンネル」

虎のごとうねりてバスは海底に地震を怖るる毛穴の縮む

渋滞のトンネルをゆく車の列 日本列島に身を委ね居て

海底に閉ぢ込めらるる定めかと迷妄勝るにふと日の中に

川崎の工場の煙盛んなるを吉とするべし富士は消えたり




「都心の眺め」

ビル群ははるひに光り三角のいちやうの芽吹き幾何学の街

こんもりと緑濃くする神田川ボートハウスのペンキや床し

潮満ちて風の絵筆は白線を無数に描き川の溢れつ

暮らす窓 働ける窓 走る灯の反照わづかに神田川淀む

都会とは他所行きの顔 卑小なるねぐらに躱(かわ)すその美と速さ




「宵の新宿都心」

長月の十三夜ころ絵巻物めきて光の塔の群れ立つ

星見えぬまで摩天楼 玲瓏と光の元をいづこより得る

鮮らけき都心のビルの夢見時 滅びの前のマンハッタンの




「帰路」

京葉道東京ベイを巡りゆき帰路は羽田へ 歌会(かかい)の旅路

新旧のタワーの漸次窓に立ち湾の埋め立て矩形連なる

まどろみて東京遠望二つながらタワー並べて木更津は暮る

名月を待つ七時すぎバス内を映す鏡となれる窓かな

山の影落ちる十六号線日の暮れて眩しくスーパー全容示す

文明の器とシステムに運ばれて吾は呆然と対価を払ふ

五井駅更級日記の頃はもや文月四日の望の月の出

月の出をネオンの中に見つけたる眼ほどに携帯写してくれず

宵闇を金色燦然昇りゆく月速きこそわれらが自転
____