私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

ヒヨドリジョウゴとともに 2012年 歌の旅だった

母は施設でも描く、わずかの天然を
ヒヨドリジョウゴの巻

        

「日本」

白き薄き花弁に紅さす山茶花を口ずさみつつ垣根を曲がる

書に倦めば夏は畳にどつたりと冬は炬燵にもぐる日本

女学生弓引く日々の黒袴ぴたり畳みて寝圧しの準備

ふるさとと言ふには淡き七輪の炭の香 畳屋 新茶を煎る香
  
山ふかき兵庫に行きて関東の人驚きぬ吾は逆にして




「銀杏の頃」

冷え込みし冬空の下振り返る黄色に温(ぬく)き輝く公園

この季(とき)ぞ五井駅広場こがらしに万朶と黄の鳥賑はひ立てり

黄金の五井駅前となりしかな風といちやうの切りなき乱舞

空色の川の巡りの野の上に風強ければ機影静止す




「血縁」

待て待てと追ひかけゆけば転ぶまで逃げて幼児の鈴ふる笑ひ

諦めし物理の夢の誇らしく理科の友とふ名を子に与ふ ==孫の命名

やつと一つ釣れし小魚焼きたてを親子で分けし白き河原に

物差しを失ひし親敗戦の子の自由あり終戦生まれ

生垣の中に小鳥のひそやかに団欒らしきご馳走は何




「老いる日々」

待ちぼうけ海路の日和ざわざわとをつとかつまか生き残り賭く

老眼に許してをりし隅々の塵灰色に西日の射角

新しき命は生るれ 去るわれら長寿百年めざせどいつか

瞼閉ぢなほしずしずと湧きこぼる冬涙雨金柑に降る




「百円バス」

考へは休むに似たりバス降りて光なき空おろおろ歩む ==cf. 馬鹿の考え休むに似たり

電線の警告空が発しいて見回してみる霜寒の朝

蔦の葉の紅の図案をつい眺め信号赤にわがバス逃す

生温(なまぬる)き凩激し人絶えて乗り合ひバスを待つ月忌日




「世間」

政権の右傾化支ふる若き声ネットの中の居場所しか無き

カラオケの箱根の山に轟ける唄声の快わがはまるやも

雪と雨のあはひのミスド小女子の小声の会話嗚咽へと変はる ==ミスタードーナッツ

天空の鏡面ビルに映るバスの窓にわが顔あり見詰め合ふ ==ビルの谷の首都高速
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