お茶の花とともに 2013年房総に2年ののち
2013年
母の手作りのものいくつも
お茶の花の巻
「失望の年?」
年末に初夢宝くじ少し買ひしばかりに失望の年
ただ白き紙美しく括られて今年も荒野広がるペイジ
ふたつほどがつがり抱きローソンへ晴れ着のはたち敏捷のさま
オリオンをキリリと飾る冬空を覗けばまろし青き夜の底
北海に泳ぎてありし紅鮭の冷凍パックなり一瞬にして
手すさびに薬指にてアイフォンの魔法の画面するりと捲る
「あの人この人」
同ひ歳の師の歌書隙のあらざりてこれはいかんと身仕舞正す
戯れに夫の我がため買ひくれし文字一つ無き砂漠の手帖
メル友も寝つきたるらし二十五時ブログもサイトも口を閉ざしぬ
北風の何と言ふ子か角々でぎしぎし遊ぶ古家をめぐり ==北風小僧のかんたろう
「運の尽き」
運尽きて糧を得る術断たるれば節約すれども貧へとすべる
災ひの熾きにいぶされ往(い)なしつつ生命は失ふかがよふ力
わたくしめ独語が専門無口にて独り言すらあらぬ独活(うど)にて
スマートさ軽さ明るさ重さなく独活と言はるる能なき生まれ
そもそもが軽き我なれせめてもの洒脱にたたく軽口もなし
「ミントグリーン」
昔子に買ひしポトスの葉先から雫あふれて命黄緑
わが与ふ寒の水にも喜びてミントグリーンのポトス長らふ
夫とわれ心無きかに罵りてミントグリーンのポトスの困惑
「小学生」
朝日子に大きプリズム差し出せばへやの宇宙に虹を浮かせり
平行四辺形の面積 底辺に高さをかけてマジックのごとし
工作の木の本立てに丸窓を糸鋸とやらに母と開けてし
絞り染めの糸を解けば紅の中瞳開きて無辜の白花
道路より雪の階段ポストまでいくつか降りて昔津軽に
「寒のクレマチス」
寒の空に見たき望月なほ七日 冬の鈴蘭もどきも待つか ==スズランに似た白クレマチス
冬のため変異させたる鉄線花 寒の日々こそ鈴蘭めかす
冬の軒に蔓をめぐらすクレマチス白き花びらこれ見よと反る
金色に艶めく蜜柑 冬ざれし土塀にたわわ花束のごと
山茶花の雪洞(あんどん)仕立て六尺余 稀なる花つき交番横に
「白い建物」
手入れされ窓静かなるマンションと隣る墓苑の然るべき石
レインボーブリッジに白き石の群れ意匠凝らしてしみひとつなし
屋上まで高層ビルに乱れなく心貧しきわれは悲しむ
大寒の車窓に流るる松並木無駄なき自然の清き枝ぶり
「大寒」
大寒の十三夜月しみじみと何もなき庭眺めてをるらん
「わが仲間細胞たちよ今はしも死にゆく刻ぞ」引き連れ去りぬ
日あたりに烏のむくろてらてらと見事な織りの羽根をたたみて
春を待つ笹鳴き聞きし生垣に団欒なからむ吹雪く今宵は
大寒より蕾開きしクレマチス末枯(すが)れたる葉の黒きを配して
かそけくも花の生垣二週間 冬クレマチス白く地に敷く
四季のなか放り込まれて十五度の寒暖の差に人の厭詛や
夏と冬日々交替もよからむか寒さに感謝暑さ有り難し
「冬クレマチス更なる進化」
花弁散り黄の雄しべ失せ ふと見ればぽんぽんのごとなほみなぎりて
雌蕊より白き花珠生(はなたまあ)れいでて冬クレマチス命渾身
ふはふはとまろきが三つそれぞれに涸れし花弁の支へを受けて
時過ぎて冬クレマチスの冠毛の疎らになりぬ箒のごとく
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