私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

お茶の花とともに 2013年房総に2年ののち

2013年
母の手作りのものいくつも
お茶の花の巻

       

「失望の年?」

年末に初夢宝くじ少し買ひしばかりに失望の年

ただ白き紙美しく括られて今年も荒野広がるペイジ

ふたつほどがつがり抱きローソンへ晴れ着のはたち敏捷のさま

オリオンをキリリと飾る冬空を覗けばまろし青き夜の底

北海に泳ぎてありし紅鮭の冷凍パックなり一瞬にして

手すさびに薬指にてアイフォンの魔法の画面するりと捲る




「あの人この人」

同ひ歳の師の歌書隙のあらざりてこれはいかんと身仕舞正す

戯れに夫の我がため買ひくれし文字一つ無き砂漠の手帖

メル友も寝つきたるらし二十五時ブログもサイトも口を閉ざしぬ

北風の何と言ふ子か角々でぎしぎし遊ぶ古家をめぐり ==北風小僧のかんたろう




「運の尽き」

運尽きて糧を得る術断たるれば節約すれども貧へとすべる

災ひの熾きにいぶされ往(い)なしつつ生命は失ふかがよふ力

わたくしめ独語が専門無口にて独り言すらあらぬ独活(うど)にて

スマートさ軽さ明るさ重さなく独活と言はるる能なき生まれ

そもそもが軽き我なれせめてもの洒脱にたたく軽口もなし




「ミントグリーン」

昔子に買ひしポトスの葉先から雫あふれて命黄緑

わが与ふ寒の水にも喜びてミントグリーンのポトス長らふ

夫とわれ心無きかに罵りてミントグリーンのポトスの困惑




「小学生」

朝日子に大きプリズム差し出せばへやの宇宙に虹を浮かせり

平行四辺形の面積 底辺に高さをかけてマジックのごとし

工作の木の本立てに丸窓を糸鋸とやらに母と開けてし

絞り染めの糸を解けば紅の中瞳開きて無辜の白花

道路より雪の階段ポストまでいくつか降りて昔津軽




「寒のクレマチス

寒の空に見たき望月なほ七日 冬の鈴蘭もどきも待つか ==スズランに似た白クレマチス

冬のため変異させたる鉄線花 寒の日々こそ鈴蘭めかす

冬の軒に蔓をめぐらすクレマチス白き花びらこれ見よと反る

金色に艶めく蜜柑 冬ざれし土塀にたわわ花束のごと

山茶花の雪洞(あんどん)仕立て六尺余 稀なる花つき交番横に




「白い建物」

手入れされ窓静かなるマンションと隣る墓苑の然るべき石

レインボーブリッジに白き石の群れ意匠凝らしてしみひとつなし

屋上まで高層ビルに乱れなく心貧しきわれは悲しむ

大寒の車窓に流るる松並木無駄なき自然の清き枝ぶり




大寒

大寒の十三夜月しみじみと何もなき庭眺めてをるらん

子に詫びることのみ浮かぶ大寒の小望月照るはみだすごとく

「わが仲間細胞たちよ今はしも死にゆく刻ぞ」引き連れ去りぬ

日あたりに烏のむくろてらてらと見事な織りの羽根をたたみて

春を待つ笹鳴き聞きし生垣に団欒なからむ吹雪く今宵は




大寒の白クレマチス

大寒より蕾開きしクレマチス末枯(すが)れたる葉の黒きを配して

かそけくも花の生垣二週間 冬クレマチス白く地に敷く

真白さの雪のひとひらずつ散りて冬クレマチス春立つ日まで

四季のなか放り込まれて十五度の寒暖の差に人の厭詛や

夏と冬日々交替もよからむか寒さに感謝暑さ有り難し




「冬クレマチス更なる進化」

クレマチス大寒咲きあり立春にはなびら舞ひ初め蕊のみ残る

花弁散り黄の雄しべ失せ ふと見ればぽんぽんのごとなほみなぎりて

雌蕊より白き花珠生(はなたまあ)れいでて冬クレマチス命渾身

ふはふはとまろきが三つそれぞれに涸れし花弁の支へを受けて
 
時過ぎて冬クレマチスの冠毛の疎らになりぬ箒のごとく

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