私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

柿変化とともに 2013年 大胆な試みもあり

生の手触りまざまざと母は生きえて
柿変化の巻

            

「机に拠る」

鈍色の空はさながら冬の底望む気持も失せて日の過ぐ

絵描きらの腕も及ばじ色の海デジタル画面に溢るる具象

パソコンの画面に虹を捉ふるは視覚細胞数字を見るのか

わが歌に習ひも性も現るる不注意にして愚かしきミス

佐太郎の抒情の歌をごくごくと呑みこみいつか芽吹き青かれ





「応需短歌〜佐藤佐太郎の真似」

梅待月 上弦八日目 冴え冴えと 青き夜空の中天の路

小さきもの集めてひとの喜びの木切れや小石宝石お札

動物の眠りに落ちてしばし不動 ガラスの眼(まなこ)開け動き出す

ひとつ鴨水脈(みお)どこまでも乱されぬ江津湖に春は名のみなるらし

恋に落ち活性化せる脳のさま すべてMRIにて見通されている




上総国分尼寺跡地 かずさこくぶんにじあとち」

上総なる国分尼寺の回廊を桜吹雪とともに歩めり

かそけくも耳に鮮やか鈴揺れて東大寺にも澄み渡らるむ==東大寺の灯籠の4分の1というもの

黄金の鈴を連ねて春嵐吹けば光りて灯籠の楽

上総なる国分寺の塔ベンガラの七重(ななえ)賢し黄砂まぼろし==国分寺

民の幸を仏に拠りて恃みたる聖武天皇千二百年前

恃みしは仏の加護なり黄砂にて運ばれたるや唐土の思想

天平国分寺の塔 民のためといくつ建てられ戦に焼けし




「庶民の暮らし」

猫まんま醤油かつぶし平成の御代にふえゆく下層の暮らし

どうしてもエスカレーターに乗れざれし天然パーマの祖母は雲居に

英国にEU可否の論議ありて口に指当てしんと聴く人ら

笑ひ過ぎ涙こぼれてなほ可笑し いとけなきかな孫にも起こる

二歳児の眠気と食ひ気照れ笑ひカレーライスに顔を突っ込み




「過去よりの声」

不意に濃く懐かしさ湧きて汝が気配なれば暦に由縁を探る

十年を遥か過ぎきて干涸びし世の浮き草の葉裏のその痕

ひたすらに澄みし声なほ耳にある寡黙なる子がふいに歌ひて

春の日に届きたる文はつこひの人の婚 汝が基(もとい)喪はる==推測だが




「春の花咲く」

ときわはぜ 今年も保護の対象にて同じ角度に朝日に向かふ==目につかぬほど小さな薄紫

梨花咲きて佳き言の葉に綴りたき憧れ満ち来白絹の艶

ぼさぼさの柔き花弁に頬紅をほのかつけたるごと春紫

図鑑の絵そのままに咲く宝鐸草(ほうちゃくそう)二つ花房庭に下向く

隣り家に最後のひとつもちりぢりに散る八重椿ほの赤にして

はやみっかむざむざ過ぎるわが皐月 シロツメクサの何ぞ香れる




「デジタル脳」
1. 風のごとスクリーンセーバの映し出す色の変転あやかしと見る

2. 万の色を視神経へて脳内へ認識せしむ何ぞゼロと一

3. 二進法に神経伝導伝わりて可能範囲に七色に舞ふ

4. そのわけは知らねどそうと知りてのち世の深層に心捕はる

5. 視神経の受け取る波長は光よりの屈折反射種々あるひとつ

6. シナプスの受ける刺激が電位の差起こせばイオン伝導可能なり

7. 軸索を行く電流のオンとオフ 前頭葉にて認識査定

8. 海馬保存されしひとつの組み合わせ「青色」と呼ぶ 一文化日本

9. 「あお」と聴く母の声音と指の先 繰り返さるる神経接続


「超マクロ」
10. その莫大 砂粒すべての数よりも銀河は多し離れ合ひつつ

11. 音の無き宇宙を飛びて来る光 脳は彼方も正しく見るや

12. 永劫のごとき遥けさ ハッブルプランク捉ふるその色は真か

13. わが百年一四八億年の先っぽに ダークマターとダークエネジー知る


「超ミクロ」
14. この心身の空疎なること宜なるか原子ひとつはほぼ真空なり

15. たとふれば教会にいる蠅ひとつ原子核とせば電子は外に

16. 物質と反物質の生まれてはぶつかり消えてエナジー放つ

17. 無から無へ在り続ける間(ま) なにゆえか永劫の中不均衡残る

18. 熱されて量子飛躍あり 定まれる軌道をひょいと色エネジー発す

19. 雲の如き軌道の海に電子あり 光年老いずひた走るあり

20. エイチツーの成れる原理は何ならむ 二つの電子の軌道触れ合ふは


「物質生成」
21. 電磁波の自己組織化というものか次第に絡み合ふ元素たち

22. 育ちたる宇宙は元素表にある化学物質を生産したり

23. 星と山 草 動くもの脳髄も同じき元素の組み合わせなり

24. 電子舞ひて原子は流る 寄り合ひてこの身を成せりしばしの日数


「量子は別世界」
25. 光とは質量ゼロの電子なるや 干渉波実験に電子を飛ばす

26. 量子らの有り様不定 観察によりてのみ確定すペア量子しかり

27. スピンするペアの粒子は距離あるも双子のごとく心通わす

28. 絡み合ふ量子ふたつの特性を 神にも等しき計算機とせむ

29. ゼロと一の情報二つを共有し可能性すべて計算し尽くす

30. エンタングルメントする二量子に情報托しコピーを作る

31. 肉体と言へど原子の情報より成れるゆえ即空間移動も可

32. サイコロを神は振らずと片や言い 神を推測するはならじと片や

33. 絡み合ふ量子に遠隔操作あれば超光速信号あらねばならず

34. この証左にボーア量子論凌駕せり アインシュタインと神の全知を


「風のアインシュタイン
35. 知見の差かくもありしか この銀河以外知らざりしとふアインシュタイン

36. 弦のごと振動止まざる粒子の相 聞こえぬ音か見えざる色か

37. 不確かなる電子の位置なれ わが次元確かと思ふ謎なる大雑把

38. 質量を与ふる粒子(ヒッグス)の存在は確かとなりて正しき途上

39. 水素二個の核融合を果たし得て西暦二千年星を生じさす

40. 原子核をぶつける装置 ビッグバンをブラックホールを生じさす意図

41. 天才の知恵と苦心の未だとほく解き尽くすなく大千世界


「遺伝子」
42. 遺伝子は細胞核に幾重にも折り畳まれて精緻の引き出し

43. 詳細を文明こぞりて追ひ求む 進化のひきがね突然変異

44. 美しき仕組み知るべし 細胞の機械のごとく全知のごとく

45. 肝胆と照る小望月サテライト(人工衛星) 大気の海の底を測りて

46. 宇宙への地球の渚薄けれど底方(そこひ)に群れてわれら儚し


「地球の自然」
47. みじか歌にけふの驚き発見を無理にも詰めたし自然のメカを

48. 陽は火なり 一億五千万キロの彼方より核融合の恵み小春日

49. 庭に来る日を待ちし姫踊り子草 ちりめんの葉の陰に紫

50. 紫は自然好みよ 青と赤自在に混ぜて濃きも薄きも

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