私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

菊紅葉とともに 2013年 結局空振り

会えば繰り返される昔の話を聞く
菊紅葉の巻

             

「霜月の庭」

側溝の沃土にずらり朝顔のこぼれ種の芽 カイワレもどき

紫蘇の香(か)を抱き 引き抜く重たさの 無数の根の張り土を抱きて ==茂った紫蘇を引き抜く

霜月の草引きをれば日々草 改良されて希望の新芽 ==冬に咲こうと

漆黒に赤と金光らせ芋虫の棲む薮枯らし 根の長きこと ==芋虫直径1cm以上、根5m以上

土色の柘榴(ざくろ)の外皮を押し開く 勾玉光りて水の層なす




「霜月の鳥」

カーテンの隙間の枝にひょいと来て見らるる知らず隙あり鶲

必殺の吾が一撃は羽虫打つ 狙ひ違はず台風来る島

美観などなきこの辺り ときわはぜ猫の往来など見つけたり

ひこ生えのオシロイバナを抜く晩秋 なんと芋つき旨さうに見ゆ

小春なり明日は強風かもしれず チシャの新芽を啄(ついば)む小鳥よ




「うろうろ」

朝夕に小説読まば楽しきに吾も書きたく努めて苦し 

小説を読むと書くとの違ふこと ひきずらるると支配するとの

助動詞の古文活用迷ふ日々 現在形か過去か完了

読みくるる祖父の間違ひ指摘せしと語り草なる絵本覚えず

若ければ嫋々たる歌詠みしはず リルケの青き便箋恋ひて

母なるに未だに足るを知らぬとは 言ひ聞かせては甲斐無く歩む




「夢がなければ」

投稿せる科学の歌の五十首を役目の一人(いちにん)読みたるか否

立冬のハイビスカスの枝を切る 明日咲くつぼみ花瓶に預く

をみなごの幸福談義遥かなる 今語り合ふ古りし友垣

「肉太に生きむ」子の眼に覚悟ある 命を削る仕事と知るも

カレンダーを買ふは霜月 半世紀も繰り返したる希望飽かなく




「幻の家族」

来年の暦母へと 霜月も半ば過ぎたり吾が日も疾(と)くて

話し合うこと可能なる日々 数えらるるほどかも 母を訪なふ ==卒寿

傍らに琵琶湖にそよぐ葭叢(あしむら)を眩しみ見たる人は往にけり

失ふと思ふだに膝頽(くずお)るる それが家族であるべき定義

吾が去りて悲しき子らの家の夢 夕べ影絵のドアは閉ざさる

夢にわが飛び往く家の黒かりき 一目見んとて忍び歩けり




「夢の後始末」

カリカリの鰯のメザシわがうちをよく巡るらむ 分子となりて

辰の年 昭和最後のお年玉切手四十円二枚 封筒に貼る

屋根掠め貼り付くごとき満月に顔文字描こうか 「にー」とせし秋
                ==長男が描いた次男の「にー」とした顔、保育園のころ

いつまでのデイサービスのバス いつか吾も乗るのか 福祉絶ゆるか

陽だまりの西洋朝顔いつまでも元気なれども撤去と致す

びつしりと引き出し占むる何ものか濡れて無機質 夢に見たりし

ばらせるかかけつこ全く駄目なりし 隠したままじやずつとルーザー




「天体と樹」

温さなほ朔月(さくげつ)近き師走にて陽光浴びて星屑を浴ぶ

目覚むるに来る日来る日が極楽のやうなれば不安の兆す青空

菫色と思ほえるまでの空の色師走半ばの日本上空

黄葉して道はいづこへ友の住む丹波の里に由良川生るる
 
今年また無事に黄金公孫樹なり根元に屈み円錐形を撮る

黄金の鳥か扇子か飛翔さすいちやふの末裔ドレス振るひて




「短歌思案」

歌人ら集まるなれば小春日に地図にて調べ補聴器つける

白寿なる歌詠み居ます冬空の千年松のまつかさのごと

歌の端の零(こぼ)れんとして透き徹るガラスのペンもつ青いインクに

賀状には短歌三昧と書き置きてさて嘘つきの鏡の顔見る




「美しいこと」

瑠璃色の丸き茶碗よ こんじきの小笹揺らしてカリンと儚し ==失ってしまた美しいお茶碗

ヘッドフォンをやうやう買ひしクリスマス 滝に飛び込み音に打たるる

柔らかに太極拳は空を打つ足裏(あうら)に受けて満つるものもて

白雪の重ければなほ朱(あけ)の実の赤ひとすじの光を放つ

女には所詮うからを愛すのみ至上の恵みしたたるばかり

ドイツ語の面白さ是非教えたく白墨踊らす吾のありたり




「困惑」

生れしゆえ生きゐる吾のニヒルにて 定め越えたる君安寧ならむ

三十年今から生きると決めてみる ひとつ始めてもう捻挫となる

まやかしか「ここにあった」と見つけしに使はむとせばあれ?あれはどこ

ここかしこ暦大小掛け替えて楽しき行事 知らぬが花と

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