牡丹とともに 2014年行ったり来たり
すぐに忘れる母は、わたしを待っているだろうか
牡丹の巻
「初ビートルズ1」
吾を駆るリズムとサウンドしたたれる緑の道なりファウストもどき
眼に緑初ビートルズつむじ風倦みし心もこの世を愛す
ビル群の並ぶ空の端CDにポールかレノンか浴びて運ばる
笛吹市の古き民宿夢のごと湯より戻れば葡萄冷えゐき
ゼブラゾーンの真上に濃淡分岐あり左右の空より陽と雨と落つ
名にし負ふ泰山木の花色の匂ひてをらむ燕飛び交ふ
香り降る木下の道を酔ふて過ぐたれを待ちてやかく焔(ほむら)立つ
キャンパスを巡る花房薫香のニセアカシアといふはまことか
呼ばれたる心地に見つく朝顔の青き目見(まみ)なり見つめ合ひたり
南瓜の葉陰の家居声そろへ雀のうから屋根を楽しむ
「初ビートルズ2」
ずらずらと懊悩這ひ出でホラーめくスマホ忘れは制御失ふ
氷上をすべるかのバスやすやすと時空わたりて悩み変わらず
義妹らと袂分かたん頼りたる弟(ひと)の死にたる深みを見詰む
花を観よ桃はいかがと旅立ちを促す文言読みてうなだる
見下ろせる蟻のマンション隙間なる路の細くて驟雨に翳る
増設の首都高の道断たれゐてフラッシュバック阪神瓦解図
東京の地下を降りゆくほどにG増せばや思ひ哲学的に
月代(つきしろ)の昨夜はちらりと覗きしに熱海に重き海と空なり
五月雨に空なく海なくあを色を恋ふるまなこに緑山迫る
ずしずしと雨戸叩かれこもり居て『砂の女』めき梅雨の始まる
「初ビートルズ3」
百年はもつべき家を重機もてはや轟かす悲鳴エントロピー
思春期の扉ひらけば猪突なり恋のシステム張り巡らされゐる
あんなにも支配されゐて恋まみれ早乙女花にも生の策略 ==とは「へくそかずら」
奔りたり知らざるままに生殖の一途のあとの寂しくはなし
侮れぬ激辛ラーメン失へる味覚もどりて鬱より救はる
ゆつくりと動けど垂るる汗の塩ひと舐め旨きわが太極拳
省くべき炭水化物摂るべきは豆腐と野菜一キロ減量
コーヒーも敵はぬ睡魔に沈みつつふとも病の水井さん思ふ
黒道さんダークに詠ふ人なれど短歌サイトの指導穏しき
一本の強き念ある歌となせ雛の口腔燃えたつを見よ
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