赤いさざんかとともに 2012年となる
2012年
三月より持ち直した母なり
山茶花の巻
「あらたまの力」
あらたまの空に光はみちみちて溶け入るごとく重心揺らす ==太極拳
冷気すら快きまで息熱く太極拳に自他を去りゆく
烏らが車道を低く飛ぶ背なの漲るパワー翼龍として
落日の富士の稜線オレンジのタワーも照らす赤き満月
跳ね返せそんな先輩無視しろと鬱の息子に言うじっと心に ==以前にある時
「いたわり」
故知らず吾(あ)より生まれしその縁し天より来しごと 早や戻りしも
唐突に幼きころの表情の明かりの如く甲斐無く浮かぶ
「あれこれの君の仕草」と詠みかけて歌とならねど消せぬ言の葉
この雲は定めか否かはらからにかかるもせめて君が手添へよ
吾(あ)をも見き 秀づるゆえの当然の優しき視線他をいたはりて
「白川の源泉」
白川の源泉といふ深き水あるとも見えぬほどに透きたる
からたちの棘と思ひて白秋を歌ひをりしに柚子の木なると
ひとときを母と過ごせる帰るさの暮るる坂道「父さん」と呼ぶ
手のかかる母となれども正月を物忘れして笑ひ合ひて過ぐ
母の手になる花瓶にはすすき穂のさやさや流るいつも窓辺に
「エネルギー」
馬の瞳に空の映りて脊な震ふ 二本脚らの心を読むらし ==題詠「馬」
跳ね回る仔やぎ仔うしの喜びの末は知らねど「遊べよ仔馬」
天馬でも天女でもよし運びてよ海の藻くずと身はなるとても
塗る程にたるみし肌の手に負へずせめて笑へと強ひるもをかし
「大寒の雨」
元旦の震度4より癖となり古家を揺する風も疑ふ
地の揺れか雨の雫かみしみしと鳴るその次を畏み侍る
歯医者にて泣き叫びいる幼子よ小さき喜びあれよ明日は
つひに降る 凍月(いてつき)巡る間乾きしが大寒の土静かにも濡る
淋し気にふと空を見る清けき眸愛しくも見ゆ鄙の若人
「隣人の恵み」
購ひし枯れ木の如きつる薔薇に語りては剪る赤き芽の上
我が窓に赤き柄の葉のかかり来はかのゆずり葉と隣人に聞く
ヤーコンはアンデス産の不思議の実 外は里芋 梨のさくさく
抜き立てを「ほら」と賜ひし根深葱1枚剥けば香りてま白
香り立つ深葱どつと鍋にいれ卵落として一人の昼餉
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