私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

かきどおしとともに 2011年情けないまま

白い小さな頭を撫でる、母の頭を
かきどおしの巻
            
           

「相克の分析」

天に地に彼を気遣ふ人あるに哀しみの根や母者を恨む ==彼のねっこ

苦のあらば生の手触り赤々と難に出逢へば覇気もて罵倒す

この重き病ひ悲しむむしろ苦を求むとばかり五十年を経つ

たれに言ふみな老ひゆけばかの秘密投げて捨つるか墓所もなき身は

キリストの求めしイバラたれゆえに苦悩あまりて神は立ちいづ




「回避行動」

見渡せど閉ざさるるのみ夫連れて袋小路に明日はあらねど

夜も果てて家族の縁(えにし)かりそめに結びしものを哀れ愛しむ

愚かさを憎む夫なりひたぶるに怒りき妻の謝らざる時

どうなさる薬も医師も自殺さへ逃亡も無理ただ核の雨

襤褸被く(ぼろかづく)夫を護るにしくは無き微動だにせぬ我は鋼鉄




「原因と心理と結果」

たまたまの脳の接続 女(をみな)へと生の全てを預けて愚か

何故ならば自分を追ひ詰め武士(もののふ)の捨て身を試す死の切っ先に

母よ母汝が子を護れ癒すべき天(あめ)の力は夢にすぎねど

母恋ふる幼なの情の癒えざりて深く潜める脳の歪みに

これまでと叩き付けらるその先に脳は意外の出口を示す

道無きと見えしところに思はざる綱は投げらるそれを掴めと




「結果の反転」

道尽きて遍(あまね)きおのれ悟り得て堂々迎ふる越境の刻

自を去るはまもなくなれど太極に迎えらるらむ 静かに語りぬ

懊悩の果てに得たりし超越もたちまち墮するだだっ子の性

悟りにも癒されまじとかく深き自虐の仕組み哀れその脳

不幸をば言い訳とすや他人の非を言い募ること普通とは言へ




「はるばると来たぬかるみ」

正しさを言ひ募り他を貶むる言を三十年馬耳なる耳に

言い募る汝が言聞きてそを捨つる極意三十年毒舌何ぞ

真のところ測りかねてきしその気質幾年ともに不幸の日々を

わが欲と汝が慾かつて重なりしことありしに世に届かざる

叶ひたる夢もあれどと叶はざる夢をなほ追ふ吾ぞ愚かしき

我が欲は愚かしきほど限りなく汝が慾は小どこか卑怯




「力関係」

父の死は母の望みのせいなりと言ふ意味も吾を軽んじたきゆえ

隷属を悲しきまでに堪えたると二人ともにぞ思ひいるかも

なにゆえのこの隷属の悲しきに段ボール箱を蹴るこれでもか

おっととは妻に命令する者か上下の発生体力の差のみ

隷属に甘んじ悪口に動じぬを強さと誇る正しきやわれ

激やせの夫の診断震災のPTSDまあそれもあり




「せめて自愛」

悩ませぬ日とてなき夫物わかりよく優しくば自由も恋はじ

負けん気か負けて諭すか「自由など遊び暮らして夢と消ゆるを」

自由無き介護の日々が課せられし定めにて我が救はれいるや

すでに吾も病持つらむ 痩せし背に夫の若き日戻り来る今

複雑に絡まる世界のなりたちに違はずすべて無明なるらし

さにあれど楽しき思ひ出ひとつほどあるか いくつかあるにはあれど

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