枇杷の花とともに 2011年 怪奇の年なり
2011年
老母、意識混濁を脱する3月
枇杷の花の巻
「兎も角も兎年」
あらたまの年はしらくも風に乗りめじろせきれい舞ふ無重力
兎も角も明けたる年の空のみはどこかほがらに鳥さえ歌ふ
堪へかねてつひに落ちたる悲しみの結晶のごと雪は白かり
「ラビリンスクイズ」
北へ行き風邪ひきになりゴミの日と勘違ひして儲けたる今朝
ラビリンスクイズ好みし昔われ浮き世迷路に小みかん食す
当然の結果と言ふべしくねくねともがき来(こ)し今 烏賊(いか)料理でも
うんうんと頷いて読む寒の句ら逃げも隠れも出来ぬ日々
生き御霊(いきみたま)美(は)しき記憶に紫の母をやがては吾(あ)も偲ぶらむ
==母と別れることになる
この葉こそ暑き寒きも常緑に偶(たま)さかの斑(ふ)の白く輝く==桜蘭らし??
「ネガティブポジティプ」
曇りのちふと空晴れて眩しさを仰ぐ間もなし風と雪来る
いくつかの節目のあともぱつとせぬそのくり返しなれどポジティブ
何もなきベランダも佳し木と泥と時々花のさらば混沌
冬空になどかすじ雲長きさま見上ぐるに蚊の如く飛ぶもの ==飛蚊症
若きらのつむり傾け眠る機の揺るるがままに黒き濃き髪
「みんなガンバレ」
あちこちに押しやられてはまごつけど一つ確かに真理のこの身
それぞれに負けるなと言ふ母と夫弟と息らその妻子らに
その日のみ結婚の日がダントツの幸せだったそれもなほ吉
闇覗きつつに対峙す引っ越しの無秩序夫に試さるる日々
次々に波頭厳しく迫り来て左右に凌ぐ孤身のジャンプ
「自然の癒し」
弥生へと向かふ末日枯枝のパールづくめに祝ひの微光
カラカラに耐えたる二月末日の深夜かそけき慈雨に満たさる
うた心思ふ暇なく如月の冷気を吸えば春の香もする
「ゆきやなぎ」
針先で突つきたる白 刻々と雪の花こそ春の蕾ら
忘れ雪過ぎし朝(あした)の枝元に目覚めたるかに雪柳の眼
かにかくに陽は落ちつつに眼裏(まなうら)のオレンジの色温し静けき
「憂慮ばかり」
悲しみの明日の蕾ふるえつつ吾(あ)を待つ知らせ咲かず散りてよ ==踏んだり蹴ったり
千年の震災をなほ生き延びし人等をやがて待つ死はいかに ==引越の日の東日本大震災
別れむと幼なの肌に寄り添へば友情の香の開く心や ==一歳の孫
一つずつ作りし荷物ひとつまたひとつほどきていかなる日常
「千年の災ひ」
約束の地とぞ思ひて着きし日に地と海と火と凄まじきまで
千年の災ひなれどたやすくも消ゆる命か母なる地球に
被災者の言葉の健気聞くだにも知らず知らずに涙流れ来
カキ菜とふ天ぷらうまかろカキフライの美味なることは承知してるが
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