私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

オニユリとともに 2008年まだつづく

母の絵の天然
オニユリの巻

        

「自意識」

ふと知りぬ茫漠宇宙にわが脳のひとりなること 在るかの如く

筍は土を破りて柔らかに十メートルへ整ひて待つ

時来れば土より尖り双葉生る同じ螺旋の緑の解析 ==DNAの螺旋は生命の同じ基本




「刈られしもの」

夕まぐれすすり泣くがに群るる百合 明日は刈らるる身と知る白か ==高砂百合

明け鴉ハローハローと不思議なり誰か誰かが要請すらし

朝晴れて高砂百合を倒す音 小暗き樹間 白き飾りを

じっと見る九月の暦「いつ決めた?」心に問ひつ数字の列を



「子育て終了」

ドンとくる打ち上げ花火夕顔は支柱を越えて軽やかに伸ぶ

明日は切るあの赤松に絡む葛 末の子にして支へ合ひしが

遠花火華やぎのあと轟けり苦し楽しき子育て終はる



「夏の放心」

クマゼミの必死と競ふ青き青 雲眩くて風ひとつ鳴る

水滴を含みしままの朝風にヨルガオの張る十のアンテナ

嗚呼真白 幾万トンの雲の山ちひさき頭ひとつ生まれぬ




「九月、それまでの日々」

朝顔のひとつ辛くも拠りて咲くひまはりの茎立ち枯るる辺に

青空に血の色かざすサルビアか カッと目を剥く朱(あけ)のペチュニア

かの夏に汝が見上げしとふ向日葵の育つを見れば悲しかりけり

わが内に今浮かぶことあの日々に汝が思ひたるそのことならむ

バス停の無人のベンチメモを書く仕事帰りに二十分待てば



「神か科学か」

海中にヒトの生きたる時期あると読みしよりわが潜水泳法

拠るべなき裸のサルは実を求め草より糸を紡ぎまとひぬ

偶然のひとつ起こりて確定すすなはち事実かく虫を打つ

仕込まれし宇宙の種の育ちしとかく識る世紀に生まれたるかな

粛々と二十一世紀生きてゆく「神」解かれゆく未曾有の日々に

プリンタはギャーティギャーティ声明(しょうみょう)す 生死無ければ救ひも有らじ

サギも来て平等院に集ふ音幸あれかしと哀れ言の葉

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