私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

これという活動もしないのに、時のみは素早く流れて行くことだ。つまり細胞の異形化がすすみ、免疫細胞の対処がまにあわず、いわゆる癌に浸食されて行くということである。

 珍しく、また幸運にも書くべきことにぶつかった。
例によりアバウトなまとめではあるけれど。

 がん細胞を植え付けたねずみの実験で、稀に癌がきえてしまうことがあるのをある学者が偶然に認めた。何十年も前の話だ。
 この仕組みを解明しようと、十年にも渡る大掛かりな研究の結果、キラーT細胞ががん細胞をひとつひとつ消滅させているということがわかった。

 しかしがん細胞の増殖が速いので間に合わない。
 最近になって、もうひとつわかってきたこと、がん細胞にはペプチドという印が表面にあり、キラーTはそれをめじるしにして攻撃しているのである。
 ところが、そのペプチドは1種類ではない、たくさんくっついているではないか。それどころかキラーTがあまり効かないものもある。学者の間では、治癒率の低さから次第に熱が冷めて行った。

 ところが日本でのみ、がんワクチンを作ろうと、執拗に研究を進めているチームがあった。東大のなんとかいうチームである。

 キラーT細胞を大量に増殖させることにも成功した。
しかし、敵もさるもの、各臓器の癌細胞には、それぞれ独自のペプチドがたくさんついている、これを解明しないことにはキラーTも有効に働かない。
数千のペプチドとキラーTとを、掛け合わせ、細胞消失への鍵となるペプチドを探したのである。十年かかった。

 2006年、臨床実験が許可され、再発予防にも効果がみられた。134人中98人に免疫細胞の活性化が認められた。
日本人学者の情熱とネットワークが世界トップクラスの実績をもたらした。治験も始まっている。

(キラーT細胞を大量に増殖させることは、あらたな副作用をうまないのだろうか、自己免疫病とかの。少し危惧する)