私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

先日の御婦人の兄上のお話


彼は、お名前も存じ上げないので、彼は元気な質であった。
病院とは縁遠い生活を五十五歳頃までおくった。

ふと口の中の、上あごになにか舌先に触るものがある。
いつまでもひっこまないので、まあ行ってみようか、くらいの気持で病院に出かけた。

もちろん、黒皮腫とかいう極悪物であった。
3年という余命が残された。
摘出、肝臓に転移、摘出、胃に転移、摘出、腎臓に転移、摘出、最後に脳に転移。もう摘出不可能。
こうして彼は7年生き延びた。
というか、痛い目にあった。でもその間に、人生の味もより深く味わったのかもしれない。

ところで、小生もこの黒皮腫の疑いをもたれたことがある。
左脚の親指の爪の先の肉が痛い。棘が刺さったような。
自分で毛抜きで掴むが何もとれない。化膿するとまずいので近くの病院へ赴いた。
看護士は何だがあわてて、特別な皮膚科医を呼んだ。
その日はもう真っ黒で飛び出ていたのだ。

医者は、なあんだ、と言って、いかにも役に立ちそうな大きな毛抜きといったものを取り出した。それでぐっと引き抜いたものがある。木の屑が爪楊枝の先のように1センチくらい深く刺さっていたのだ。
心配してくれた看護士さんは、きっとこんな実例に遭遇したことがあるのだろう。今回はからぶりだったが、それを怖れてもらっては困る、ということになろうか。