私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

スパコンによる遺伝子の仕組みのシミュレーション


まず、たとえば人間の遺伝情報は30億の塩基対からなる。
A,T,C,G(20個のアミノ酸から生成されている)の4文字の対からなるこれが生命の設計図ゲノムである。
1990年には13年かかってこれを解析した。
数年後には一日で、ひょっとして10万円でゲノムを調べられる。
しかし全遺伝子の機能はまだわかっているわけではない。
さて問題はがん細胞の生成の解明である。
そのためにはスパコンが必要となる、つまり情報工学が。神戸市に建設中の次世代スパコン京(けい)をもってしても実用にはまだ遠いが、
一つ例示すると:
がん細胞に抗がん剤パクリタキセルを投与、細胞内にある2万の遺伝子の活動の様子を24時間、データに取った。
このデータを使い、抗がん剤がどう効いたのかをスパコンでシミュレーションした。
投与から1時間後、標的である遺伝子1が働き、別の遺伝子2が活性化。
その1時間後、2と連動して遺伝子3が活性化した。この3こそ、薬剤耐性関連遺伝子(パクリタキセルが効かない乳がん患者がもつ)であるので、ここまでの経路のどこかに作用して活性化を妨げる物質を見つけると治療につながる。
面白いのは、実験室でのデータだけであとは方程式を駆使してネットワークを描き出すのだが、そのシミュレーションの結果は、既知の医学、生物学の知識と合致するのである。
こういう「システムがん」研究は、旧来の手法では到達できない知識にまで到達することであろう。