花は人間のために咲いているのではないのに。
うたさえも唄いたくなる。
時よ止まれ、と言いたくなる。
何故にこの美の認識?
この性向がヒトの進化に何かの利があったのか。
いくつかの小川の記憶緑なす野はなだれゆく光る流れへ
飽き足らぬツグミの叫び花酔ひの小雨もしとどたそがれをるに
五分咲きを散らす雀ら花ひとつくわえて楽し朝餉とすなり
瞑りたる眼を開きては白白と桜ばかりの窓にたはむる
咲き初めの桜を揺らすメジロその小さき軽き土緑色
花のまま旋回しつつ降る桜雀の狼藉花むしろ敷く
時を止め夕闇桜浮かぶ図は在るや在らざる酔ひて唄はむ
はらはらと散ればこそとふ桜花いっとき動かず時空に貼り付く