私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

庭梅とともに  2010年の時間

2010年
母の記憶に天然はまだある?
庭梅の巻

           

「水玉」

秋澄むやだれかが弦を爪弾きて雨の翌日咲くたますだれ

夜の雨の名残の雫煌めきて不思議のもみぢ佳き朝きたる

けふ何を感じたりしか春を呼ぶ雨の粒受け夜ごみを捨つ

雨乞ひの効きて紫陽花今まさにひときは高くざわめき立ちぬ

青鷺の棲む古き沼われは知る赤き眼をして蔭より翔ぶを

灰色に穏しき空を水玉の奏づる音も夕べ果てゆく



「億年の旅」

子から子へ伝はりいくも我が選りしYと呼ばるる染色体は

五グラムの胎児の浮遊する海を抱く仕組みのありて苦楽す

梵鐘と幹のくねれる白梅と法然死して八百年とふ  ==増上寺にて

金星と眉月われにウインクの距離と軌道のだまし絵いくつ

観る者も無きに巡りて億年の乾ける月の旅を悲しむ



「春浅葱」

春浅葱白き花々名乗り出で力合はすや桜咲くまで

微風にもはらり散るらむ桜花枝のみなりし空間を占む

花びらはもう旅立つか互にぞ会ふらむ縁あらば会ふらむ

道野辺に敷く花びらを嘆かむとすれども人のすでに詠みたる

この世にて詠むことごとく挽歌とし供ふる心なると気づきぬ

究極のモンスターのごと富士やまは寄る辺なき民最後の砦  ==写真の遠くに富士山




「庭 物思ひ」

あら嬉し白猫がいる中庭の風が転ばすプラスチックなり

大き葉の天使の羽に護らるるダチュラの莟五枚にひとつ

頬杖の陽に暖かきペランダに凭れ瞼は花待つ心地

霜月を咲かむか枇杷サフランと茶の花白く山茶花あかく

かりそめの夏暮れざる夜最北の街往く影はアイス舐めつつ

名のみ知る師の歌涼しかそけくも消ぬべき一瞬留むるは愛

一刻は二時間であり寺任せドンが鳴るときゃそれ昼飯だ

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