私家版マスメディア〜logo26のシニアの生き方/老婆の念仏

何が出てくるやら、柳は風にお任せ日誌、偶然必然探求エッセイ

名も知らぬ実とともに 2009年とにもかくにも

母の見たる天然の美
無名の赤い実の巻

          

「夢に逢ひたし」

無為なりし文月大事な向日葵を避けて矛盾の仏桑花咲く

憶良詠む旅に死に往く子の心「遺せし親はいかにか泣く」と

心打つ露草の色けふのため花色八つ呼ばふそこここ

論文の参照さるるを図書館に今も見つくる生きし証と

汝が魂は哀れみ来しやわが一生最後の昂揚夢に逢ひ得し

若子らのはにかむ写真コスモスの生き生きとしてアルバムや善し

汝が面にまなざし正しはらからは為すべきを為し素的を生くる



「ひとの営為」

二十二歳歴史の切つ先ベルリンの熱風は巨人ボルトを走らす

「何故ここに」存在の謎追ふ脳の発火しているホーキングの眼

母恋ふる童謡苦手わが育ち大家族にて依存少なく




「家廻り」

蝉任せ盛りの夏はヨルガオも小花咲かせてはかなき早暁

ふうはりと大き花傘さしかくる合歓の木下の夏影の濃し

午後四時の光の角度虹色にけふの奇跡の糸の構造

上弦の半月南天突き立ちて鉄槌さながら家(や)の上にあり




「心また震へる」

心また震へる九月朝光(あさかげ)に悲しきまでに花の彩(あや)なす

ロケットの飛びし十年叶はざる到達地点無為と恥ぢしや

哀し児へ弟たちの如くにとをみな清(さや)けき絵姿添へる

後方に在る写真より手鏡に映る黒き瞳(め)ただ真向かひて

慎重にきっと山ほど思案して消去法にて辿り着きしか




「捻挫」

掃き乍ら口づさみゐるふふふふと言葉はいづこ七五のリズム

サングラス負けじと歩むその視野のぐらりと這はす手に地の熱さ

やはり来し頓挫の日々に捻挫して自由を得つさてわがため何を

ひがな座し心遊ばす希有の日をお腹の吾子と持ちたる記憶




「生と死」

煌煌と分娩台に陰も無く自然の手に南無嫁をそなふる

道程は今を始まるシナプスの5千億より秘密生るると

露草も白夜顔もけふこそは最後のひとつと覚悟の秋日

昨日をハイビスカスは寿ぎてけふは閉じたるピンクのままに

文明の栄華の裏の穴ぼこに吸はれし吾子か足るを知らずて

忌日まで従ひ行く日を虹色の円弧戴く地球(ほし)にてあるか

___