メジロとともに 2008年を流れる
昔、母の描いた天然
メジロと椿の巻
「母の心」
清浄の身体は燃えき翌日に骨温かく抱かれて行く
おめでとう三十六の誕生日みんな一緒に随いてゆくから
マイボーイ全速力で漕ぎ出して母の心は追ひかけてゆく
「マボーイ」と彼も歌ふよ今にしてプレスリーを聴くその言葉ゆえ
==エルヴィス プレスリィに愛し子の歌ある
重力に反してのぼる白梅のつぼみは拳 ひるまぬ形
「一生(ひとよ)」
泰平の世に仰ぎ見る冬空ゆ垂直に撃つ問ひの雫は
連らなれる命賜る哀しさよブロークンハート葉陰に伏すまで
誰が夢の破れざらんや野を行けばゆらめく星らいや高にして
時充ちて崩さるる壁あるものを囲まれている我とふ限界 ==ベルリンの壁
「早やも春」
花も葉も裸木も良しありのまま興趣至極(きょうしゅしごく)と見ゆるぞ佳き日
人も世も淡き桜に抱かるる頃汝が寛き心根思ふ
広げたる大鳥の羽ふうわりとあまねくこころ配りし子なり
いくつかの小川の記憶緑なす野はなだれゆく光る流れへ
「桜、鳥」
咲き初めの桜を揺らすメジロその小さき軽き土緑色
五分咲きを散らす雀ら花ひとつくわえて楽し朝餉とすなり ==雀は花茎の蜜を好む
花のまま旋回しつつ降る桜 雀の狼藉 花むしろ敷く ==桜の木の下にも桜が
飽き足らぬツグミの叫び花酔ひの小雨もしとどたそがれをるに
「桜、人」
瞑りたる眼を開きては白々と桜ばかりの窓にたはむる
時を止め夕闇桜浮かぶ図は在るや在らざる酔ひて唄はむ
はらはらと散ればこそとふ桜花いっとき動かず時空に貼り付く
春雨のコートを脱ぐに花蕊はひとつ落ちたり声もかすかに
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