ショカッサイとともに 2007年をゆく
2007年
老母の描く天然
ショカッサイと名付けられて
「我の影」
ストリートさすらふ我の影落ちてただ一尺の存在を踏む
なほ残る最小限の欲と物 わが短髪のなほ知るを欲る
六十路とふ恥を晒してなほ歌ふ 求めて得るは自虐か自慰か
生きる意味問うまじむしろ かく為すと自ら定む さようにてござ
黄砂浴びおぼろとなりし満月を浮かべし空に異星人ひとり
「至上命令」
わが産みし命三つをいかにせむ 至上命令従ひにしが
ヒト群れて生き残りかけ競ひ合ひ迷走しつつ謎へと迫る
梅香る 歌唱は響かふ 四肢伸べて困難の風は 脳の喜び ==次男は音楽の虫
アイディアを思ひつきまた見失ふ さもあれ次のより良きを待つ
プレーヤーの棚の写真の花園に若き二人の秘密の暮らし ==次男夫婦のこと
合間見て歌声浴びんと扉開くそは別世界善きかなLOVEは ==プレーヤーの棚の扉
「紫陽花前後」
万緑を透かして聞こゆ竹の秋 凄まじきかな矩も越ゆべし
苦しとも思はず母を押して行くあじさい過ぎてこの世の径を
今生の債務を果たす緑陰のひとつの虫も等しと思ふ
しつとりと文月始まる向日葵のつぼみ迫り来 予感のごとくに
「美しき言の葉」
美しき言の葉ざくざく集めよう手当たり次第に見てよこの世を
露草は葉月五日にわつと咲く永久(とわ)にとどめむすべ無きままに
幻とするほかはなき青よ青ツユクサ惜しも狂ひて撮りぬ
先達に倣ひていつそ世を捨てな 詩を為し書して嘆きわたらむ
「月食に遇ふ」
若きらの未知なる生の前に立ちさらされ居るを愛ほしともふ
月食の影のカーブは紛れなき地球の稜線 想へよ円弧
見納めと皆既月食くらぐらし身の内沈み健やかにして
厳(いかめ)しき炎帝空を望月にゆづれば澄みぬ風の鈴音(すずおと)
物好きな生け垣欲しき お茶の木か 小笹からたち くちなし山茶花
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